“子どもは嘘をつく”ことについて、みなさんはどう思いますか?当然だと思いますか?それとも子どもによると思いますか?
 では、“我が子は嘘をつく”についてはどうでしょうか?「うちの子もきっと嘘をつく」と思いますか?それとも「うちの子に限っては嘘をつかない」と思いますか?

 先日勤務校で起こった出来事です。一緒に考えてみてください。

『マラソン大会があり、タイムと順位を取りました。ある女の子が、去年のタイムと同じだったことを残念がっていました。「ママに褒めてもらえない」と思ったその子は、認定証に書かれているタイムを自分で書き換えてしまいました。しかし当然、不自然です。親は問いただしますが、その女の子は「私は知らない。隣の子が勝手に書いた。」と説明してしまいます。そしてその親も、「うちの子はこんな嘘はつかない」とその女の子を信じようとしました。結局、本人もやっていない、隣の子もやってない、親は納得しないとなり、落としどころがなくなってしまいました。』

子どもを信じるということ

 様々な書籍を読んでも、ネットで検索しても、「子どもを絶対的に信じることが大切だ」と書かれています。絶対的に信じるとは、損得勘定抜きに、担保もなしに、単純に子どものありのままを受け入れ、それでも大丈夫だと信じることです。これはとても大切なことだと思います。

 今回の事例での親も、確かに子どもを信じています。しかし、本当に信じたと言えるのでしょうか?私はこの女の子が、“うまく誤魔化せちゃった”とか“ママは私を全然分かってないんだな”と感じてなければいいなと案じています。
 今回の“信じる”というのは、『嘘をついてしまったこの子も、きっと自分の過ちや悲しさが理解でき、これからは賢明に誠実に成長する。だから大丈夫。』と信じることではなかったでしょうか。
 仮にこの女の子が本当のことを言っていたとしても、親が『何があっても大丈夫。』という心持ちでいれば、“うちの子は嘘はつかない”という発想は起きないのではないでしょうか。『嘘をつくかもしれない。でも大丈夫。』なのであって、“うちの子は嘘はつかない”というのはデメリットしかないように思います。

 子どもはおそらく誰しも嘘をつきます。そして、嘘をついた時点で後悔し、反省しています。つまり、十分に傷付き、学んでいるのです。ですから、『苦しかったね。私も苦しい。』『みんな同じような経験をしたことがあるよ。』『嘘はよくないと学んだね。』『次に同じようなことがあったらどうしようか?』『大丈夫だよ。』などと、その子をありのままに受け止め、一緒に学びを確認し、それでもあなたを信じていると安心させてあげることが大切だと思います。そしてこの姿勢が“子どもを信じる”をいうことだと思います。

あるべき親の姿勢

 しかし実際には、我が子がこんな嘘をつくなんてと、大きなショックを親は受けてしまうと思います。もしかしたら、大きな声で怒鳴ってしまうかもしれない、手が出てしまうかもしれない、泣き崩れてしまうかもしれません。でも、それはそれで、それだけ私は悲しかったという思いが子どもに伝わると思います。

 子育てや教育に、正解や必殺技はありません。あったらこんなにも悩んだり問題が起こったりしていません。そう考えると、あるべき親の姿勢とは、『どれだけ子どもを見ているか』『ありのままを受け止められるか』『何があっても子どもの人生を信じられるか』であるように思います。そして、親も子どもと一緒に、悩んだり苦しんだり失敗したりしながら前進していくのだと思います。

 ここまで書きながら、尊敬する大先輩の言葉を思い出しました。この言葉は、私が親になって悩んで相談した時に言っていただいた、私がとても大切にしている言葉です。

『子育てで、はじめっから上手くいくなんてありえないよ。それでいいんだよ。親はね、“子どもに親にさせてもらう”んだよ。』

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