『プーおじさんの子育て入門』(著:柿田友広 絵:相沢康夫 エイデル研究所)

プーおじさんの子育て入門

 私が我が子とよく行くおもちゃ屋さんがあります。そこは、賑やかで鮮やかな一般的なおもちゃ屋さんではなく、モビールや幼児用の楽器などがあって年齢に応じたおもちゃが揃っていたり、木を使った様々な積木があって子どもと一緒に遊びながらおもちゃを選べたりします。
 そのお店は“心を育てるおもちゃを世界から”“いっしょに遊び、いっしょに選ぶ店”というコンセプトがあるように、静かで落ち着いた雰囲気の中で、大人も子どもと一緒になっておもちゃの良さを感じながら選ぶことができます。

 何度もこのお店に通っている私は、ある日そこの店主にこの本を勧められました。「子育てに良いおもちゃや、おもちゃの役割などが学べてとってもいいですよ。」と言ってくださいました。もともとお気に入りのお店でしたし、教育者であり親でもある私にはいい学びがありそうだなと読んでみることにしました。

子育て便利帖「本来の家族の在り方」

 “本来の標準的な家族の在り方を見つめ直す”という目的で、筆者による『子育て便利帖』がとても勉強になりました。少し長くなってしまいましたが、ご自身の子育てや教育方針と照らし合わせながら読んでみてください。きっと目から鱗の情報があると思います。

➀『自立とは手がはなれるということではない。大人と子どもの良い関係をつくっていくことだ。』・・・
子育ての目的は、子どもを自立させること。だから、おもちゃを与える理由は、子どもの自立を助けるため。年齢や能力に応じたおもちゃを適切に選んで与えれば、赤ちゃんだって自立している時間がある(モビールをじっと見るなど)。

②『子どもを思い切り遊ばせる。日をまたいで続きで遊べるようにする。中途半端で片付けをさせない。』・・・
昨今の子どもの学習意欲の低さは、幼児期の遊びの体験不足である。親はすぐに片付けなさいというが、これではいつまでも遊びが深まらず、毎日ふり出しに戻ってしまう。また、片付ける時は「棚」ですべて見えるように整える。「箱」ではただのガラクタの集まりになってしまう。

③『あいさつ、ごめんなさいを強制しない』・・・
もし子どもがあいさつしなかったら、「あいさつしなさい!」ではなく“何が原因かな?”と子どもをよく観察すること。また、親は裁判官のように「あやまりなさい!」と制裁しない。害を受けた人や物を心配したり慰めたりし、本人はほおっておけばいい。

④『外遊びでは大声を出させて発散させ、室内遊びでは集中して静かに遊ばせる。』・・・
それぞれに適した環境や道具(おもちゃ)を与えるようにする。室内で暴れるような遊びは、落ち着きのない子を助長する。また、子どもの成長に合ったおもちゃは自立を助ける

⑤『しつけとは、人格をつくることである。必ず子どもの前に行って丁寧に接する。』・・・
まず静かな環境が人格をつくる。けして遠くにいる子を怒鳴らない。否定言葉は人格形成を妨げる。どんな時も、第一声は受け入れの言葉から発する。また、人格形成には人形遊びが欠かせない。人形やぬいぐるみで疑似体験したり、本心を話したり聞いたりする経験を積む。その際に与える人形やぬいぐるみは“無表情”がよい。

⑥『子育ては日課づくりから』・・・
早起きが基本。毎日同じ時間に同じ事をする。毎日散歩するなら、雨の日でもカッパと傘をさして散歩に行く。日課ができると、親の都合で子どもを引っ張ったり命令・号令したりがいらなくなる

⑦『叱らずにしつけたい』・・・
「叱らない」は「甘やかし」とは違う。また「甘えさせる」と「甘やかし」も違う。十分な依存体験が自立を助ける。親が一緒に遊んだりして「いつでも甘えられる」と思えれば、子どもは安心して親を離れられる。「甘え」のサインには存分に応えるのがいい。

⑧『子どもの環境づくりは親の役目』・・・
キャラクター商品は与えない。いかにも嘘っぽくリアリティーがないし、落ち着きもない。動力のあるおもちゃを与えない。勝手に動くおもちゃはただ見ているだけ。勝手にしゃべり出すおもちゃは単調で想像力や発想力をかき立てない。使い捨てのおもちゃを与えない。ずっと使えて、年齢と共に遊び方も工夫できるものこそ相応しい。

⑨『本は読んでやるもの』・・・
高校生まで読み聞かせをしてあげたい。また、はじめは本は親が選ぶもの。そして、子どもが選んだ本にクレームをつけない。無理に感想を聞いたり、あらすじを言わせたりしない。

子育てとおもちゃを捉え直す

 賛否両論ありそうなものもありましたが、筆者は実際に外国の幼稚園へ行って学んだり、文献研究もしたりした上で論じています。“日頃の子育てが上手くいかない”という方や、“どんなおもちゃを与えたらいいのか分からない”という方は、参考になったことが多々あったのではないでしょうか。

 この本の巻末には、出産前から10歳までの、その年齢に適した「わらべうた」「おもちゃ」「本」が、写真と言葉で丁寧に紹介されています。ここだけでも、私を含め、子育て真っ最中の親御さん方には必見かと思います。

 親の立場でも教師の立場でも同様ですが、子どもを大人の都合で動かすのではなく、一人の人間として、丁寧に、密に、関わっていく中で、いつかは自立できるように支えてあげたいものです。そのための関わり方や声の掛け方、環境づくりや道具(おもちゃ)の与え方などに新たな視点を与えてくれた良本だったと思います。

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