『小学生のための読解力をつける魔法の本棚~できる子は本をこう読んでいる~』(著:中島克治 麻布学園国語科教諭 小学館)

小学生のための読解力をつける魔法の本棚

 幼児教育や国語教育にハマっている私は、本屋で子どもの学習コーナーに立ち寄ることがあります。様々な問題集・ドリルが並ぶ中に、幼児や小学生の指導本も並んでいます。麻布学園の国語の先生の本書も、その中の一冊でした。巻末に『おすすめブックリスト』があり、“小学生のうちにぜひ読んでおきたい170冊”が紹介されていました。これだけでも購入の価値ありと思い、手に取ってみました。

読解力を高める㈠「意識的な読書は読解力を高める最強の方法」

 著者の麻布学園国語教諭、中島先生も、“読解力の向上には読書が最適だ”とおっしゃっています。しかも、単に闇雲に本を読むのではなく、読解力を高める「読み方」や「本の選び方」があるとしています。まとめます。

➀人の心の動きに向かわせてくれるような作品を選定する・・・
読書量や読解能力に応じて本を精選する。良本と呼ばれる物語がよい。読書傾向が偏っていたり、精読できていなかったりすると、読解力はつかない。

②音読で精読の習慣づけを・・・
音読すると、どこが理解できていないかすぐにわかる。あまりにつっかえるなら、その本はその子にとってレベルが高すぎる。書かれている文字・言葉の意味を一つ一つ理解して読めているかが大切。

③批判的に読む・・・
適度な距離感をもてるかどうかが読解力を高めるカギ。「自分は立場は違うけれど、この人の言おうとしていることにつき合おう」と自分なりの視点をもてるようになる。

④読んだ本の紹介文を、『紹介ノート』にまとめる・・・
ノートを四分割し、「本の感想のメモ、変更・訂正の書き加え、紹介文、調べた語句」などを書きまとめておく。子どもが面白いと感じたところは、たいてい作者が大事にしているところ。この積み重ねが読解力や表現力を高める。

⑤高学年からは物語から小説へ・・・
物語から小説へ、行きつ戻りつを繰り返す。しかし、難解な小説もあるので、無理に勧めず、存在に気付かせる程度のかかわりにする。

⑥良質な漫画は大人の世界を教えてくれる・・・
手塚治虫のブラックジャックや火の鳥など。社会の理不尽さや大人社会の汚さを教え、同時に深い愛情と希望を与えてくれる。物語から小説への移行に最適。漫画をいい息抜きに。

⑦我が子のいいところを伸ばすことを考える・・・
何に興味をもち、何が好きなのか。それについて書かれている本を勧めたり、自分の経験をエッセイなどに書かせたりしてもいい。

 このように、単に本を読めば力が付くのではなく、より相応しい内容の良本を選定し、子どもの力に応じて楽しく読み進める中で、音読したり紹介したり批判的に読んだりしながら少しずつ読解力を高めていく様子が見えてきました。

読解力を高める㈡「さらに読解力を高める小学生の学習法」

 自宅でできる小学生の学習法として二点挙げられています。まとめます。

➀本文の書き写し → 見出し付け
まずは教科書の文を、一字一句同じようにノートに書き写す。書けたらそれを読み返す。これだけでも読解力が身に付く。次に、まとまりごとに見出しを付ける。できるだけ短く表現できるように練習する。

②5W1Hを書き出す → 400字で要約
読んだ本を言葉で説明する。同時に、5W1Hを書き出してみる。これだけでも要点をまとめることにつながる。それらを参考にして400字程度で内容を要約してみる。初めは上手くできなくても、書くことでまた読解力が高まる。

  中島先生は、「読むこと」と同様に「書くこと」の大切さも主張しています。書くことで自分の言いたいことがまとまり、それを客観的に読むことでさらに読解力を高めていくことにつながるとしています。5W1Hをまとめることは、他の教育者の著書でも大切さが指摘されています。このような視点を小さい時から育てていくことが大切なのでしょう。

試験のための「読解力」ではない

 中島先生は、最後に“読解力は、ただ筆者の主張を理解して設問に答えるというレベルにとどまるのではなく、自分の考えをまとめて言葉にできる力をつけていくことこそ最終的な目的”であり、“相手の気持ちになり寄り添ったり、自分とは違う意見もあるのだと認める、そういうことを知ることが人間として最も大切なこと”であるとおっしゃっています。
 つまり、単に試験に合格させるために読解力というものを認識し高めるのではない、と主張しています。何も考えずにひたすら勉強して合格してしまった子は、人間としての価値観が育ってるかどうか心配だとも言っています。

 確かに試験が目標なのかもしれません。しかし、それも子どもの人生を考えたら通過点です。子どもが将来よりよく生きていけるよう、そのための武器としての読解力であると認識し、読解力があれば試験も通過できると逆説的に考えるのが理想的だと思いました。

 最後に、印象的で力強さを感じた中島先生の言葉で締めたいと思います。

 『たとえ能力があっても、それを伸ばしていけるのは、間違いなく読書家である』

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