『論理の力 2歳から12歳の脳がグングン育つ!』(著:出口汪 水王舎)

論理の力 2歳から12歳の脳がグングン育つ!

 先輩に薦められて出口汪先生の書籍に出会いました。とは言っても、出口汪先生と言えば昔から大手予備校講師として周知されており、私自身も浪人時代には「現代文の出口汪」を頼り、いくつかの参考書で勉強していました。先輩に薦められたのは『国語の力 子どもの頭がグンと良くなる!』という青色の本(↓)でした。拝読してみると、これまでの私の認識していた予備校講師で“現代文の出口汪”ではなく、“教育者の出口汪”となっていました。私はその後すぐに『国語が変わる 答えは「探す」から「創る」へわが子の学力を伸ばす方法』(白色の本↓)と、『論理の力 2歳から12歳の脳がグングン育つ!』(赤色の本↑)を拝読しました。とても納得でき、共感することが多々ありました。今回は、中でも一番新しく、これは完全に教育書だなと感じた赤色の本(↑)についてまとめようと思います。

国語の力 子どもの頭がグンと良くなる!
国語が変わる 答えは「探す」から「創る」へわが子の学力を伸ばす方法

新しい時代を生きる、これからの子ども達

 現在、AIとロボットによる根本的な社会の構造変化である第4次産業革命が起ころうとしています。AIやロボットは人工頭脳によって自律化するようになり、今ある多くの仕事で人間が必要なくなってくると言われています。しかし、学校の教育現場はいまだに旧態依然のやり方に固執している状況です。それは、テストの点数を取るための学習であり、つまり記憶と計算です。それらをどんなに頑張ってもコンピュータには勝てません。もうこれからは、記憶と計算の詰め込み教育では社会では役立たない時代なのです。これからは、先生が児童生徒に教える「教育」ではなく、児童生徒が自ら学び育つ「学育」となることが重要だと言います。
 そんなこと言っても、結局受験がある以上はテストの点数を意識した教育をせざるを得ないと思うかもしれません。しかし、そうではありません。そもそも受験とは、定員に対して受験生が多いので選抜しますというものです。これからは少子化がますます激しくなる時代です。定員割れの恐れがあり、どの学校も選抜をする余裕などなく、むしろどのようにして受験生を囲い込むかに懸命になることが予想されます。欧米のように、受験は論文や面接のみで“入る(入学)は易し”、たくさん授業料を払ってもらうために“出る(卒業)は難し”、となるのではないでしょうか。要するに、言われたことをただ受け身に記憶・計算し、偏差値なるものを上げることは、ほとんど意味をなさなくなるということです。

幼児童教育とは、脳を育てる教育

 出口先生は、前述のとおり大学受験の予備校講師でした。しかし、受験期間ですべての子どもに力を付けさせるには限界があると考えるようになります。そして、高校生・中学生・小学生と次第に対象年齢を下げていきました。それでもやはり、上の学年ほど成果にばらつきがありました。ついには幼児にまで下がってきたのでした。そこで大きな2つの気付きをします。1つは、人間の脳は12歳までの幼児童期に最も成長する(下図のスキャモンの発育発達曲線参照)ことです。この時期こそ与えるタイミングなのです。もう1つは、12歳までの教育と12歳からの教育は全く違うもので、前者は「脳を育てる教育」で、後者は「完成した脳に対する教育」ということです。つまり、大学受験生のような年齢では思うように伸びない子がいても、12歳までの幼児童期は、真っ白な脳の状態で、最初から新しいことが抵抗なく吸収されていくということです。

スキャモンの発育発達曲線

未来を切り拓くのは「論理力」

 人間が他の動物と大きく違うのは「言葉」で世界を整理できるからであり、言葉を使うとそこには「論理」が生まれます。論理とは、具体と抽象の「イコールの関係」、男と女のような「対立関係」、原因と結果の「因果関係」といった3つの言葉の使い方法則に過ぎないと言います。そこに加えて文章の「要点と飾り」を理解すれば、頭の中はすっきりとした明晰な状態になると言います。これらの論理を出来るだけ早い段階で子ども達に身に付けさせることで、子どもが劇的に変化するそうです。

 『論理・・・「イコールの関係」「対立関係」「因果関係」+「要点と飾り」 ← 幼児童期に』

 みなさんは「ヘレン・ケラー」をご存知だと思います。彼女は幼いころから、見えない・聞こえない・話せないの三重苦を背負っていました。しかし、サリバン女史が彼女を教育します。その手法は、具体物に触らせて、その後に手のひらにその単語を書いて教えるという方法でした。カオスの状態から言葉を獲得したヘレン・ケラーは、論理力を手に入れ、物事を整理していったのでした。結果的に彼女は、大学で博士号を取得し、障害者の教育・福祉の発展に尽くす偉人となったのです。
 このヘレン・ケラーの生涯から何が言えるのか。1つは、論理力は、後天的に学習訓練によって身に付けられるということ。もう1つは、論理力には、未来を切り拓く力があるということ。さらにもう1つは、サリバン女史のような論理力を与えられる教育者が必要であるということ。これを学校関係者や保護者がしっかりと理解することが大切です。

急速に変化する社会を生き抜くために、真に必要な力を!

 また長くなってしまいましたが、要は、幼児童期から論理力を身に付けさせるために適切な教育を与え、12歳からは自ら学びを進められるようにしてあげることが大切だと言っています。今の子ども達の多くは、こうした論理力を持ち合わせていないように思います。例えば、「ウザイ」「ヤバイ」「ムカつく」などの言葉ですべてを表現し、それも面と向かってではなくSNSのようなネットでの繋がりで関わっているため、お互いに分かり合っているようで実は深いところで理解し合ってはいないと思います。これが原因で様々なトラブルが起きていると言っても過言ではないでしょう。
 
 適切で高度な論理を習得する環境が、今の旧態依然の教育現場にはありません。ですから、幼児童期から論理を身に付けさせていくことがいかに大切か、本書から学ぶことができました。具体的な身に付けさせ方も記載されていますので、教育関係者や保護者の皆さんはぜひ読んでみてください。

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