「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ。」
誰しも一度は聞いたことがある名言ではないでしょうか?これは、大日本帝国海軍の軍人で、太平洋戦争では連合艦隊司令長官を務めた、山本五十六(やまもといそろく)の言葉です。
教育や人材育成の根源的な要素が、この言葉に凝縮されていると私は思います。
● 子どもは大人を本当によく観察している
我が子が良い言動をした時、逆に良くない言動をした時、私はまず、自分自身の言動を振り返るようにしています。すると、大抵の場合、“自分も同じことをしていた”と思い当たる節があります。
【良い言動】
(子)知らない人にも自分からあいさつをする → (私)必ずすれ違う人とあいさつや会釈をする
(子)字も読めないのに、本を読み聞かせしようとする → (私)寝る前の絵本の読み聞かせが日課
(子)動物や虫や花を見て「かわいい」と大切にする → (私)動植物が好きでよく話し掛ける
【良くない言動】
(子)リビングでごろごろする → (私)リビングで寝転がっている
(子)テレビやスマホ動画を見たがる → (私)スマホ画面をよく見ている
(子)なかなか後片付けができない → (私)整理整頓が苦手で物が散乱している
3つずつ挙げてみましたが、どちらも細かくはまだまだあると思います。言葉遣いなどは、確実に影響を与えていると思います。しかし本当に驚いたのは、たった一回だけやってしまった私の粗相を、しっかりと子どもが真似したことです。
イライラしていた私は、座っていた椅子を倒したことがありました。すると、嫌なことがあってぐずった我が娘は、家じゅうの椅子を倒して回ったのでした(笑)。この時は流石に心底反省しました。
● 率先垂範のススメ
学校でも保護者の方に、よく相談されることでもあります。例えばこんな感じです。
・「ゲームばっかりやってて、全く勉強しません。」
・「全然本を読まないんです。」
・「反抗期なのか、私の言うことを聞いてくれません。」
・「言葉遣いがひどくて困っています。」
そんな時は、必ず「親御さんご自身はどうですか?」と切り返すようにしています。
・『親御さんはテレビやスマホばかり見てはいませんか?』
・『親御さんは本を読んでいますか?』
・『親御さんはお子さんの話をしっかりと聞いてあげていますか?』
・『親御さんは、正しい、丁寧な言葉を使っていますか?』
大抵の場合は、はっとされて思い当たる節があるようです。“言い聞かす”“やらせる”“監視する”“叱る”などに大した効果はないと思います。一時的に効果があったように見えても、それは自分の判断として行動したのではないので短期的で終わってしまうでしょうし、資質・能力としては全く成長してはいません。
やはり、“自分がやって見せる”のが一番効果的なのだと思います。その姿を必ず子どもは見ています。そして、感じています。子どもによっては、それが行動として表出するまでに時間がかかる子もいるでしょう。しかし、必ず心では蓄積されていると思います。
まずは、子どもに一番近しい人的環境である“自分が”正しいことをする、子どもにこうあってほしいと思うことをする。そして、それを継続する。これが教育の一番の近道だと思います。