2020年4月に学校法人「軽井沢風越学園」が長野県に開校予定です。私はこの学校に大変興味をもっています。なぜかというと、この学校が「幼小中混在校」という聞き慣れない体制をとるらしいからです。「小中一貫」や「中高一貫」なら10年前くらいに流行し、様々な成果や課題が挙げられました。しかし、ここでは「幼小中」で、しかも「混在」らしいのです。

幼小中混在

 イメージするに、ひとつの枠の中に様々な年齢(あえて学年という文言を使いません)の幼児・児童・生徒が共生し、個々の課題に取り組みながら時に協同し、異年齢集団というより実社会に近いコミュニティの中で生活する仕組みなのではないかと思います。そんなことが可能ならば「小1プロブレム」も「中1ギャップ」もない、学習の個別化も協同化も自然に行われる、一石二鳥どころか三鳥四鳥になると思います。
 しかし、本当に現実可能なのかという疑念もあります。教師の関わり方(取得免許状も含めて)、協同化の仕組み、学校行事の有無など、一般的な義務教育校を考えれば無数の問題が浮かび上がってきます。これらの問題をクリアしつつ子ども達の学びや成長を確保できるのであれば、今後の義務教育課程に大きな影響を与えるのは必至だと思います。

幼小中連携

 一般的な義務教育校は、接続学年が大変だと言われます。つまり、幼稚園であれば年長組、小学校であれば1年と6年、中学校であれば1年と3年です。なぜ大変かというと、子ども達にとって生活・学習の環境が大きく変化するからです。その変化にうまく対応できなかった子達が不登校等になってしまう、これが「小1プロムレム」「中1ギャップ」と言われ、教育問題になっています。そうならないためにも、接続学年の先生方は前校の先生方から情報提供を受けるなど協力しながら教育活動を行っていきます。

下位校の教育を知る

 とある幼稚園の研究発表会に伺ったことがありました。その研究発表では、幼児たちの活動の様子が動画で流れ、その時の保育士の先生の働きかけなどが解説されていました。私はそこで衝撃を受けました。それは何でもない砂場遊びの様子でした。

“バケツに砂を入れ、ひっくり返して山をつくる”→“より大きいバケツを持ってきて砂を入れ、ひっくり返して大きな山をつくる”→“その行為をマネする子が現れる”→“ひっくり返ったバケツの上に立って遊ぶ”→“その行為をマネする子が現れる”→“(さらに遊びは続く)”

 なんと保育士の先生は、こうなることをあらかじめ想定し、様々な大きさのバケツを用意し、逆さまにして上に乗っても壊れないかを試していたというのです。さらに、「一人遊び」からマネる(学ぶ)子が現れ、「集団遊び」に発展するよう、環境づくりで仕向けていたというのです。そんなところまで考えて教育活動をしていたなんて、これまでは全く知りませんでしたし、頭の下がる思いでした。

 そういえば、元保育士の私の母が、「年長くらいだったら、“背の順に並んでね”といえば、お世話好きの子を中心にあっという間に自分たちで並べる。」と言っていました。それまでの私は、1年生の担任をした時、何となく一から全てを教えなくてはいけないような感覚をもっていました。

繋がりのある義務教育課程にするには

 アクティブラーニングというものは、もともと高校や中学校の授業改善が目的で提唱されたと聞いたことがあります。座学中心で、教師から生徒への一方向的な詰め込み教育からの脱却が目的です。しかし、高校も中学校も受験を控えています。結局テストで点数を取らせることが最終目標となる以上、アクティブラーニングに時間をかけてはいられない(だからこそ大学入試を変えようという流れにあるのですが)のは理解できます。しかし、先程の幼稚園での教育活動の例でも挙げましたが、下位校の教育活動をもっと知り、子ども達の成長過程をよく理解して無理なく繋げることが大切だと思います。
 例えば小学校の6年生は、中学校での取り組みを導入することが多いです。それももちろん大切なことですが、中学校も1年生として全く新しく教育を始めるのではなく、小学校での教育活動を知り、これまでの取り組みや子ども達の成長過程をよく理解した上で、「7年生」として子ども達を迎え入れることができれば無理のない繋がりになるように思います。

  とは言え、各校の先生方は本当に懸命に教育活動に取り組んでいらっしゃると思います。子ども達にとって、「3-6-3」の義務教育課程がよりよい「12」になることを願っています。

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