『教師はサービス業です~学校が変わる苦情対応術~』(著:関根眞一 中公新書ラクレ)

教師はサービス業です~学校が変わる「苦情対応術」~

 ある日、私は学校長と話をしていました。話の内容が、保護者対応についての話題になっていったときのことです。

私「企業は顧客の幸せの為にサービスや価値を提供し、お礼として顧客から対価が支払われます。」
長「うん。」
私「教師はサービス業ではないけど、顧客である保護者や子どもに教育という価値を与えていると考えられますよね。」
長「うん。」
私「そう考えると、顧客を不満にさせてしまったのであれば、教師はいかなる理不尽も受け止めて謝罪をしなければいけない、ということなのでしょうか?」
長「(おもむろに席を立ち、本を取り出し)そんなようなことがこの本に書いてあるよ。」

といって学校長にこの本を勧められました。題名からしてモヤモヤしましたが、これも何かに縁と思い読んでみることにしました。

教師は“かつては聖職、現在はサービス業”

 著者は、頭ごなしに教師を“サービス業”と呼んでいるわけではありません。昔は教師が子どもを指導すれば「申し訳ありませんでした。ご指導ありがとうございました。」と保護者が謝罪とお礼にきました。しかし、現在では「どうしてうちの子だけ指導されなきゃいけないんですか?」「あのような指導の意図を教えてください。」などとクレームがやってきます。さらに、昨今教師の休職者のうち精神疾患者は6割を越え、そのうち保護者対応によるものは上位の4番目に入っています。
 このような現状から、教師という職業は、もはや“サービス業”としてその対応策を講じておく必要があるというのです。

モンスターペアレントは実在するのか?

 世の中を見渡せばいわゆるクレーマーと呼ばれる人は山ほどいます。しかし、著者曰く、これまで対応してきた人の中では、一人もクレーマーはいなかったと言います。つまり、クレーマーとは、そもそもの実態があるわけではなく、苦情を受ける側の対応力の不足から後天的に作り出される存在なのだと言います。大切なのは、クレームへの対応力をもつことなのです。 
 教師を打ち負かすことに快感を得てそれ自体を目的にしているようなクレーマーもいます。しかし、一般的に保護者は苦情を言いたくて言っているのではなく、やむなく言っていることがほとんどでしょう。そのことを理解し、相手の立場に立って共感的理解をもって誠実に接することが大切だと言っています。

保護者対応の基本

 本書には、保護者対応マニュアル基本編・応用編・ロールプレイ・実例などが載せられています。どれも、私も実際に対応したことがあるようなものばかりで実感を伴って読み進められます。さらに、他業種のクレームとその対応についても書かれており、盛りだくさんでとても勉強になりました。 ここでは基本編の保護者対応基本七か条を紹介します。

【保護者対応基本七か条】
➀保護者の申し入れは、まずはすべて『苦情』として受け入れる
②相手は困っているのだから、話は素直にきく
③話している間、話の腰は絶対に折らない
④対応には誠意をもって。誠意とは正直に話し、実施すること
⑤正しいと思われる判断をしつつ、上司へも必ず報告する
⑥悩んだ時、上司や同僚以外に相談すると、思わぬ解決策を得られることもある
⑦解決しなければ、くよくよ悩まずに寝る。明け方に良い案が閃くことは多い

どれも本当に基本的なことですが、意外にもできていないことがあります。私自身、はっとさせられることもありました。

 この本を読んでも、やはり私は教師はサービス業ではないと思います。教師一個人に与えられている業務があまりにも多いため、サービス業のようにできることに限界があるからです。
 しかし、著者の言うように、教師も“サービス業のように構え準備を整えておく”ことは必要なことかもしれません。そして、今後ますますそのような状況に教師は追いやられていくことでしょう。

 この本を学校長に返却した後、自分でも一冊購入し、再度読み込んで手元に置いておこうと思いました。


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投稿者

熱血!まるねこ先生

1980年生まれ、愛知県名古屋市出身。 静岡大学大学院教育学研究科修了。学習塾に1年勤務。 都内公立小学校で10年、地方公立小学校で3年勤務。 都内と地方の教育に対する考え方の違いに戸惑っていた中、世の中の急速な変化に対応できるのか(大人も子どもも)と焦りを覚え、なぜかブログを開始する。 趣味は、家族サービス、猫との戯れ、アウトドア、温泉、読書、寝ること。

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