今の時期、学校で『マラソン大会』や『持久走大会』が行われているところが多いのではないでしょうか。運動の秋とも言われますので、身体を思い切り動かすには心地の良い季節と言えるでしょう。
 一方で、運動が苦手な子どもにとっては、やはり辛い時期とも言えます。私は無理やり運動をさせ、運動嫌いを強化することが一番良くないと思っています。では、“マラソン大会や持久走大会は、学校で継続してやるべきでしょうか?または、なくすべきでしょうか?”この問いについて考えてみたいと思います。

やるべき派の考え

 子どもの体力低下や、運動する子としない子の二極化が叫ばれている現在を考えると、この運動しやすい時期に、多少無理してでも長く続けて運動する経験を積ませることは有意義と言えるでしょう。運動しない子は運動する心地よさの経験がないだけであり、それを実感させる良い機会と捉えることもできます。また、やらないよりは確実に体力は向上します。
 さらに、日々走った記録を取ることで、自分の成長も感じられるし達成感も得られることが期待できます。学校という環境では友達もいますから、頑張っている友達を見て一緒に頑張ろうと思える、ヒドゥンカリキュラム的なメリットもあるでしょう。

なくすべき派の考え

 学校というのは公教育の場ですから、すべての子どものことを考えなければいけません。数人でも“無理やりに”“嫌々渋々に”という気持ちで運動している子がいるなら、それはその子のことを尊重しているとは言えません。その子も走りたくなるような、具体的なアイデアでもない限り、ますます運動離れを強化してしまう可能性があり、やはり大会は行うべきではないのです。
 さらに、小学校学習指導要領体育には、【A体つくり運動】動きを持続する能力を高めるための運動のなかで、“無理のない速さで5~6分程度の持久走をすること”という文言で表現されています。つまり、何十分もかけて何キロも走ることまで求められていません。中学校学習指導要領保健体育には、【C陸上競技】長距離走のなかで、“走る距離は1000~3000m程度を目安とするが、生徒の実態や気候に応じて弾力的に扱う”という文言で表現されています。つまり、個々の能力に応じて無理なく走らせることが求められており、全員で同一距離を走る大会形式では必ず無理が生じることになります。

子どもはどう思っているのか?

 実は、私はこれまでの勤務校で、『マラソン大会』が廃止になった経験もしていますし、『持久走大会』が新しく新設された経験もしています。もちろん、伝統として続けている勤務校もあります。上記の意見は、これまでの私の経験で、職場内で議論されてきた内容なのです。
 どれも的を射ているし、子どもためを考えての意見です。ですから尊重するに値すると思います。結果、そのときの学校長を中心とする先生方全メンバーの総意で決められたのであれば、どちらでもいいようにも思います。何度も言いますが、子どものためを一番に考えての意見ですから。

 しかし、今考えて思うのは、“子ども達自身はどう思うのだろうか?”ということです。主体は子どもなので、そこに子どもの意見が入っていないのは、ある意味不思議でもあります。児童会や生徒会にこの議題を投げかけてみて、実際に子どもに議論させても良かったように思います。当然両意見が出てくると思います。その時に、『やりたい人が苦手な人をこうやってサポートしよう』というような具体的な支援策が子どもから出てきたら、その『マラソン大会』や『持久走大会』は成功するのではないかと思います。

 このように考えると、大人が子どものために懸命に考えるのは素晴らしいことで、その末に出された結論は非難するべきではないとおもいます。同時に、そこに子ども自身の意見も交えて、すべての人が当事者意識をもって関わり意見を出し合うことが大切だと思います。苦手な子も、『みんながこうやって支えてくれるから頑張ってみよう』と思えるのではないかと思います。
 自分の意志で走り始めた子どもは必ず成長するでしょう。すべての秋の運動行事が、すべての子ども達にとって主体的で有意義なものになっていることを切に願います。

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