まずは、下の問題を解いてみてください。

アミラーゼ問題(著:新井紀子 掲載:東洋経済新報社、2019/9/6)

 分かりましたか?答えは、当然「(2)アミラーゼ」、ではなく「(1)デンプン」ですよね。専門用語を知らなくても文の構造さえ理解できれば、小学生でも解ける問題です。これは、数学者の新井紀子さんの著書『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)に出てくる「アミラーゼ問題」という有名な問題です。どう有名かというと、お察しの通り不正解率が非常に高くて有名なのです。例えば、東大の大学院生に出題したところ、日本人大学院生は全員不正解。唯一正解したのが中国人留学生だったと言います。

『AI vs 教科書が読めない子どもたち』

🔵今こそ育てるべきは『国語力』

 教育界は今、とても多くのことが上から降ってきている状況です。英語重視、道徳教科化、プログラミング導入などがそうです。では、これらがじっくり吟味され、各学校で受け入れ万全で導入されているかと言えば、NOです。学校の実態も考えずに上から降ってくるか、学校にお任せの丸投げか、とにかく「誰が指導できるの?」「何をするの?」と現場はバタバタでしょう。そのような状態ですから、どこまで子ども達に力を付けさせられるのか疑問です。
 そんなことに注力するよりも(多くの時間と労力が取られ、それに見合った成果が得られるのかが問題で、無意味だと言っているのではありません)、もともとある教科をもう一度見直すべきだと思います。見直したい教科が『国語』です。

 子ども達が教科書を読めていないかどうかはさて置き、OECD(経済協力開発機構)が実施したPISA(学力到達度調査)の結果を見ると、日本人は科学・数学的応用力と比較しても読解力を苦手としている(2015年までにおいて)ことが分かります。このような状況下で、なぜ国語ではなく、英語やプログラミングなのでしょうか?

学力到達度調査の結果の推移

🔵国語力は、生きる力そのもの

 国語科は、大別して「話す」「聞く」「書く」「読む」の4つの分野の能力を身に付ける教科です。さらに、これらの中には『考える』『伝える』『筋道立てる』『相手意識をもつ』など、生きていく上で欠かせない能力も当然含まれています。つまり、国語はすべての言語活動や論理的思考の中核を担うものであり、生きる力そのものなのだと思います。
 
 このように考えると、国語力なくして他教科の力の獲得はあり得ないことになります。上記の生物学のアミラーゼ問題も然り、新井さんの専門分野である数学でさえも、やはり国語的な読解力や論理的思考力がとても大きいと言います。
 英語もプログラミングも、もちろん道徳も、この急速に変化する社会においては必要な能力、ツールではあると思います。しかし、そのすべての土台となるのは『国語力』であるという事実は忘れてはいけません。

 

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