『首相、全国の小中高など一斉休校を要請』
2020年2月27日(木)、子どもを下校させてからの勤務時間外にこの報道が流れました。これにはだれもが衝撃を受けたことでしょう。現場への予告や根回しなど一切なく、我々教員も報道で知りました。
始めは正直“それはないだろう。”と油断していました。しかし、大阪市や名古屋市が次々に臨時休校を決定しました。結果的には私が勤務する自治体でも3月2日(月)からの一斉休校が決定しました。
● 一斉休校による学校の課題は?
・準備時間なしで学級学年納めができるのか?
・長期休業中の学習課題を含めて、子どもの過ごさせ方はどうするのか?
・共働きやシングルの家庭はどうするのか?
・送る会や卒業式などの行事はどうなるのか?
・未履修の学習内容はどうするのか?
・評価や評定、通知表はどうするのか?
・子ども達を自宅待機させたくらいで、ウイルス感染を防ぐことが出来るのか?
一瞬でこのくらいの課題が頭に浮かびました。冷静にじっくり考えれば、まだまだ課題は上がってくることでしょう。例えば、休業中の学校はどのような対応をするべきか?体育館や図書室を解放したり、学童へ支援に行ったりが考えられます。また、家庭や子ども達とどう繋がりを保っていくかも悩みます。家庭訪問や電話連絡、学校ホームページの頻繁な更新などを行うのでしょうか。やらねばならないこと(must)、やった方がいいこと(better)は何なのかを、現場では考えることになるでしょう。
●一斉休校による社会の課題は?
人命最優先で徹底した対策を講じるべきというのなら、学校だけでなく行政機関や民間企業も巻き込んで、時期をうまくずらしたりしながら通常業務を停止し、1~2週間は通勤がまばらになるよう控えさせるべきだと思す。なぜなら、子どもを自宅待機にさせても、親は働きに出て通勤電車など人の大勢いる場所に行くのですから、ウイルスを貰って家に帰れば当然子どもにも感染するでしょう。とてつもない損害が発生することは目に見えていますが、人命が最優先なのでしょう?なぜ子どもだけ動きを制限するのかと感じてしまいます。
また、学校も大変ですが、特に大変なのは子どもと家庭だと思います。小さな子どもを一人で家に置いておく訳にはいかないでしょうし、大きい高学年や中学生のような子どもはずっと家に居られるのでしょうか。結局友達とつるんで外出していたら休校の意味がありません。企業が子連れ出勤を受け入れたり、NHKが教育番組を増やしたりと柔軟に対応しているところもあるようですが、2週間目3週間目辺りから精神的にキツくなってくるように思います。
また、学校が休校になった影響で給食もなくなりました。給食に利用するはずだった食材はキャンセルとなり、業者は大ダメージです。さらに、多くのコンサートやイベント等も中止を迫られています。(利権の絡む東京マラソンや春の選抜高校野球は行われるが、いいのか?)それらを収入源としている方々にとったら死活問題だと思います。政府の具体的な支援が必要であると思います。
● 教育の軽視
感染のピークを遅らせるためにと国の政策として決まってしまったことなので、百歩譲って休校はやむなしと納得するとしましょう。しかし、卒業式の中止だけは納得がいきませんでした。卒業式は正式名称「卒業証書授与式」です。何も式典を華美にする必要はありません。歌や呼びかけ、来賓の長い祝辞も要りません。せめて学校長から卒業証書を一人一人手渡ししてあげるべきだと思います。
かつて戦時中も学校長が卒業証書を手渡ししていたと聞きます。3.11の震災の時では、泣きながら謝辞を述べる生徒代表の様子が心に残っています。証書を受け取った時、子ども達は自身の成長を実感したり、山あり谷ありの学校生活を振り返ったりするのです。大人にとっては毎年行われている一行事かもしれませんが、その年の子どもにとったら一生で一度きりの行事なのです。
また、卒業式は、大きな次へのステップの気持ちの切り替えでもあります。SNS界隈でも、もう今日で最後という学校の子どもが泣き崩れる報告が多く見られました。学校と言う場所はそれだけ影響力のある場所なのです。簡単に無くしていいものではない、むしろ卒業式だけは絶対にやってあげるべき行事、やらなくてはならない行事だと私は考えています。
● 今試されていること 『教育の力』
このような状況となり、今こそ学校と家庭の「教育の力」が試されていると思います。
学校では、4月から子ども達が進級して、不安なく学校生活が送れるように試されています。この休校の間に何ができるか考え、準備を整えておく必要があります。何もせずに4月を迎えれば、不安定で落ち着きがなく、間違いなく荒れる学級が多く出てくるでしょう。子どもの状態や心理を予測し、休校中にできる支援や、4月の第一週は前学年の内容を扱うなど具体的な対策を講じていく必要があります。
家庭では、予定していなかった休業となり、子どもをどのように過ごさせるかが重要な課題となるでしょう。ただ家に閉じ込めておいてもストレスを溜めるだけですし、放任でも休業した意味がありません。こんな時こそ、親子の関係を密にする必要があると思います。意識的にコミュニケーションを取って会話を増やしたり、一緒にニュースや新聞を見たり家事を行ったりして多くの時間を共有するといいと思います。
繰り返しになりますが、学校も家庭も今こそ「教育の力」が試されているのですが、一方で違う観点から見ると、そのような時間が確保されたのですから、普段できなかったよりよい教育をするための機会(時間)が与えられたと前向きに捉えることもできます。大変なのは皆同じです。知恵を出し合い、互いに支え合って、この国難を乗り越えていきましょう。