とても残念なニュースが飛び込んで来てしまいました。小学校の先生間での「いじめ」が発覚した、という内容のニュースです。「ああ、また先生の肩身が狭くなる」「こんなのは一部の人たちで、大半の先生は懸命に頑張っているのに」と様々な思いが駆け巡りました。しかし同時に、自分の若手の頃を思い帰すと、身に覚えの一つや二つはあったかなとも思います。これは、教員に限ったことではなく、つまり一般社会(大人間)でも同様なことは起こっているということだと思います。大人ですらこの倫理観、子どものいじめがなくならないのは当然だとため息が出てしまいます。
●いじめについて
「本校にいじめは存在しません。」という校長がいたとしたら、それは信用できません。「いじめはある。」と思って間違いないです。あからさまなものから“からかい”まで、程度の大小はあるでしょうが、教師がアンテナを常に張ってないと基本子どもは安きに流れます。いわゆる教育困難校・荒れている学校では、それがより顕著でしょう。
しかし、本当に根っからのワルはいないと思っています。どんなに素行が悪くても、どんなに弱者を虐げていても、基本的には子どもは素直で純粋で弱い存在です。その子と二人きりで「どうしたん?」としっかり向き合えば、大抵の場合いたしかたなくその行為をしていることがほとんどだと分かります。「イライラを抑えきれない」「自分自身の安全や居場所を守るため」などの理由で、いたしかたなくやるしかないのです。そして、次第に自分たちでもコントロールができなくなるくらいエスカレートしていくのです。ですから、被害者の子を絶対守るという姿勢と同時に、加害者の子にいち早く気付かせ、その状況から解放してあげる観点も大切だと思います。
●まるねこ先生の体験談・・・成功例
小学校4年生のその学級は、低学年の時からずっと荒れてきている学級でした。人数は多く、男女比は男子の方が倍くらい多く、さらに特別に支援を要する児童が何人もいました。6月くらいから荒れ始め、9月に私がその学級にT2として(諸事情あり)支援に入りました。私が入った時には大変な崩壊状態でした。授業が始まっても男子のほとんどが教室に戻ってこない、物は平気で盗む、暴力・暴言を振るうなど、とても授業どころではありませんでした。
そんな環境ですから、いじめもありました。いじめにあっていたのは、その学年の「元ボス」の子でした。みんなは、これまでの恨みを晴らすかのようにいじめていました。そして、次のターゲットが自分になることを恐れていました。私は、学級担任に、注意・指導はせず、とにかく子ども達の良いところを見付けて、認めたり褒めたりする努力をするようお願いしました。私自身は、子ども達の中に入って一人一人と密に関わろうとしました。また保護者にも協力を仰ぎ、学級の様子を見てもらうこともしました。すると、次第に自分を受け入れ、信頼し、言うことが通るようになってきました。最終的には、いじめは収まり、授業も始業の5分遅れくらいで始められるようになりました。
●まるねこ先生の体験談・・・失敗例
私が担任した小学校5年生のその学級も、上記同様に低学年からずっと荒れてきている学年でした。人数は多く、男子は女子の倍いました。授業は成立していましたが、生徒指導案件の絶えない学年でした。私は普段から、なるべく子ども達と多くの時間を共有し、たくさん話したり遊んだりするよう努めていました。しかし、5月末に被害者側の保護者からの連絡でいじめが発覚しました。力のある生意気な一人の子を抑え込もうと、よく問題を起こすグループがいじめをしていました。
私は学校長の指示の下、迅速に対応しました。しかし、被害者側の保護者が、学校に対してすでに不信感をもってしまっていました。さらに、加害者側の保護者も常に生徒指導案件の連絡を学校から受けていた状態で、嫌気がさしていたのでしょう。「なんでいつもうちの子ばかりなんだ」「学校の指導が悪いんだろう」などと不満を学校にぶつけてきました。結局この案件は、学校が各保護者に謝罪するのみで、根本的な解決には至らず、そのまま様子を見ていくことしかできませんでした。
●実体験から分かったこと
これらの実体験から、いじめが起こりやすい環境がある(男女比、配慮児童など)ということが分かりました。荒れているような実態があったなら、まずいじめがどこかで行われているかもしれないと考えた方がいいでしょう。また、学校側がいじめに対して常にアンテナを張り、先に対応することが大切であることも分かりました。後手に回ると、絶対にうまくいきません。
しかし、どんな暴れん坊も子どもは一人でいれば素直でいい子です。今よりもよくなりたい、認めてもらいたいと思っています。これを忘れてはいけないと思います。しっかり向き合っていけば、きっと話を聞いてくれます。それを担任一人に任せるのではなく、他の先生方、学校を挙げて支援していくのです。時には保護者の協力も得るのがいいでしょう。いち早く被害者の子、加害者の子を救ってあげられるよう、真摯に、誠実に関わっていくことが大切だと思います。学校に通う全ての子が、安心して学校生活が送れること、そして、そこにいてもいいんだという所属感を感じられるよう努めていけるといいですね。