令和2年4月17日、いよいよ全国に緊急事態宣言が発令されました。学校の休校もいつまで続くのか、先が見えない日々が続いています。多くの学校では、休校期間の子どもの学力保障という意味から課題を作成し提供してることと思います。全国の児童・生徒は、今まさに学校から出された課題の消化に励んでいるのではないでしょうか。
保護者の方々も、学校から課題が出されている方が安心できるというのが一般的なようです。むしろ課題が与えられないと、どうしていいか分からない、何をさせていいか分からない、と困ってしまうようです 。
● 『学力』と『学習力』はセット
今のこのような状況について、私は疑問をもっています。つまり、子ども達が“課題を与えられるまで待っている”そして“与えられた課題のみを淡々とこなす”ことについてです。これらは子ども達にとって、本当に望ましい姿と言えるのでしょうか?
私は課題そのものを否定している訳ではありません。課題は与えられてもいいものです。それらが知識や技能として子ども達に身に付いていきます。いわば『学力』の一部となっていくものです。しかし、それだけでは十分ではない、むしろ弊害すらあると思っています。
十分ではない理由は、『学習力』にあります。ただただ課題を与えられている内は、子ども達は学習に対して受け身です。終始受け身の学習は、子ども達にとって生きて働く力になりうるのでしょうか?楽しいと思えるのでしょうか?長続きするのでしょうか?
学力 + 学習力 = 生きて働く学力(生きる力)
私は与えられた課題(もしくは『学力』)プラス、自分で考えて判断し行動する学習が大切だと思っています。つまり『学習力』です。自己学習力が高い子どもは学びに対して能動的です。ですから、自分から進んで学びに向かうことが出来ます。そして、自分の課題を自分で分析し、今自分に必要なことを自分で考え判断し、学習を進めていくことができます。このような自己学習力が高い子どもが休校期間に家庭学習を余儀なくされているとして、“課題を与えられるまで待っている”でしょうか?私はそうは思いません。ここぞとばかりに自分の学習を進めていくことでしょう。これが教育で目指したい子ども像であるはずです。
● 学習力の考え方・高め方
このような話をすると“それは綺麗ごとだ。”“どうやって学習力を高めるんだ。”などという声が聞こえてきそうです。もちろん、学習力だと言っているだけでは高まっていきませんし、簡単なことではないと思います。ここからは学習力の考え方や高め方について考えていきたいと思います。
まず大切なことの一つ目は、【『今の自分より少しでもよくなることを目指す観点』が、子どもにも大人にも備わっていること】です。よく言われるのが、“レベルの高い子はできるかもね。”のようなことです。私は関係ないと思います。そもそもレベルが高いという言葉自体が他の誰かと比較しています。比べるべきは自分自身です。例えば、学習内容や学習時間も自分自身で決めるべきだと思います。勉強が苦手な子が、学校で50問漢字テストを受けるとして、得意な子と同じようにすべての漢字を同じような時間で学習し、いい結果が得られるはずがありません。むしろ出来ない自分をさらに突き付けられて学習嫌いを強化するだけです。覚える漢字を絞って学習し、その結果いくつできたのかを評価すれば十分だと思います。(今回はこの辺りは深めずに次の機会にしたいと思います)
大切なことの二つ目は、【『学習力の価値』について子ども自身が理解していること】です。そこで、子どもが理解していたい学習力のポイントをまとめてみました。
➀何のための学習か知っている
②自分の目標が分かっている
③自分で考えることが習慣化させている
④自分の良さや弱さを知っている
⑤自分で判断して行動することを認めてもらえる環境がある
⑥間違いや失敗を次に生かす価値を知っている
これらが分かっている子どもは、学習に前向きで、未知のことや自分の間違いを喜んで受け止めます。そして、さらに今の自分よりもより良くしていくことを目指していきます。もちろん、サボったり怠けたりもするでしょう。それは大人でも同じことです。大切なのは、そんな自分も受け止めて、“そんな自分だからこうしていく”と考えられるかということです。
最後に、大切なことの三つ目は、【自分に合った学び方を選択すること】です。学習する一番大きな目的は、自主・自立を創造することですが、その下にある小さな目的は試験に合格することやテストで100点を取ることなどでしょう。その目的に向かうための手段は無数にあります。“先生がこうやれと言ったから”ではなく、様々な学び方の中から自分に合うやり方を自分で決めていいのです。ですから、学校の先生は、そのような学び方を知識として多く知っておくべきです。つまり、学習内容(知識や技術)だけでなく、学び方(勉強の仕方)を教えるべきなのです。
例えば、『漢字学習では、新出漢字を一文字ずつひたすら書き続けるよりも、熟語として様々な言葉を習得するように覚えていった方が良い。』とか、『算数では、途中の考え方や計算式をノートに書き残しておいた方が良い。』とか、『学習を始める時は、簡単な計算問題などをして集中する準備を整えてから本当に学びたいことを集中して行うのが良い。』などです。しかし、これらは学び方の一つの手段ですから絶対ではありませんし、無数に存在しますから、子どもによって合う合わないがあるかと思います。子どもが自分に合う学習の手段を選択できることが、主体性を認めることであり学習力の重要な要素だと思います。
● 最後に一言
現在このような状況だからこそ、これまでの学習に対する在り方を捉え直すべきではないかと思います。私には“学習に困っている。学習に身が入らない。課題をこなしている時の顔が死んでいる。”などが聞こえてきます。
では学習の仕方を変えましょう。本来学習とは、出来ないことが出来るようになるとか、知らなかったことを知れるとか、新たな気付きを得るとか、子ども達にとって有益で楽しい営みなはずです。
あなたと関わる子どもの様子をよく観察してみてください。進んで学んでいますか?学びを楽しんでいますか?少しずつ前進していますか?今こそ、子どもに生きて働く真の学習に変える時がきているのです。