『自分事として』というのは様々に言い換えられます。例えば、“当事者意識をもって”“責任をもって”“積極的に”“自分から進んで”などです。どの言葉でもいいです。皆さんがイメージしやすいものを選択して読み進めてください。

 教育活動には、すべてそれを行う意義・目的が存在します。しかし、そこに子ども達が自分事として活動しない(できない)ことがあると思います。多くの場合、「ちゃんとやりなさい。」「どうしてちゃんとやらないの?」「みんなも頑張ってやっているでしょう?」「あなたの責任でしょう?」などと教師は叱責するでしょう。
 でも考えてみると、子ども達が“やりたい、楽しい、好き”などと感じている時、まず確実に自分事として活動していると思います。つまり、自分事として参加させるためにはそのように思わせる手立て・工夫が必要で、そう思わせてしまえば自分事として活動するということです。

 今回は様々な教育活動において、子ども達が自分事として活動するような手立て・工夫を考えたいと思います。私が大事にしている実践も併せて紹介したいと思います。

【教室環境】

 教室環境は大切です。教室はそもそも子どもが、学習する場所、友達と過ごす場所、一日で最も長い時間を過ごす場所です。ですから、教室そのものが『自分事』になっていてもらいたいものです。例えば、教室にごみが落ちていたら進んで拾ってほしいし、掲示物が乱れていたら進んで正してほしいし、自分が過ごす教室が居心地が良く好きな場所であってほしいです。
 そのために、私は以下のことを行います。

➀教室の掲示や座席の配置などを子ども達と一緒に考えて決める

 4月の学級開きの段階では、教師である私は教室に何も手を付けません。教室にあったほうがいいものはある程度準備しておき、それらを子ども達に提案します。教室がどういう場所であるべきかという話をし、子ども達と机の配置を考えたり掲示板のどの部分を何に利用するかを分配したりします。
 例えば、教卓(教師用の机)は、だいたい一番後ろの窓側になることが多いです。子ども達の机の配置は、V字やU字になることが多いです。また、掲示板は、お便りの類は教卓の後ろの掲示板になることが多く、後ろの黒板の反対側は、係活動用で子ども達が使用する場所になりがちです。教室の側面の掲示板は学習用として、透明ファイルを配置したり、自主勉強ノートのコピーを貼ったりするための場所になることが多いです。

②みんなの広場を設ける

 私は教室のどこかに、みんなが静かに座って読書したり、授業中に友達のノートや作品を読み合ったりするための『みんなの広場』を作っています。ホームセンターで打っている畳やマットなどを用いてスペースを確保するとより良い空間になります。ローテーブルや本棚を配置すれば出来上がりです。
 この場所をつくる以前は、読書は好きな子しかしない、読み合いはあちこちの地べたで寝転んでする、のようにうまくいきませんでした。しかし『みんなの広場』をみんなで作ると、その空間を大切にし、みんなそこで読書したり意見交流したりするようになりました。

【座席】

 座席の配置は先程も述べたように、基本的に子ども達が話し合って決めます。しかし、いわゆる『席替え』は、初めの数か月間は担任である私が決めます。それは、人間関係や黒板の見え方の問題を担任である自分が把握できていないからです。把握できたら、子ども達だけで話し合って決めさせます。
 もちろん最初はうまくいきません。嫌な思いをして泣き出す子がでてしまうこともあります。しかし、そのような子を学級全員が見捨てず大切にし、丁寧に話を聞くことで必ず解決にもっていくことはできます。このような経験を経て子ども達は“一人を大切に考えること”を学んでいきます。

 座席は、『どの友達ともよい関係を築けること』『見え方などが配慮されていること』『位置の平等が配慮されていること』が基本的な考え方です。これを子ども達にも伝えます。後は、子ども達が友達と譲ったり譲られたりしながら折り合いをつけ、全員が納得できるまでじっくりと待ちます。子ども達全員が100%幸せなんてありません。でも全員が80%幸せであればみんな納得するものです。席替えを子ども達に委ねることは、そんな経験ができる絶好の機会と考えています。

【当番・係活動】

 当番活動の位置付けは、『なくてはならない強制的な仕事』です。サボれば教室内の仕事が滞り全員が困ります。ですから、先生に叱られても仕方がありません。一方、係活動の位置付けは、『なくてもいいけど、あったら学級がよりよくなる創造的な仕事』です。サボっても誰も困りません。(困るのは同じ係の友達だけ)ですから、先生に叱られることはありません。まずはここを共通理解させます。

 当番活動は、どこまで教えて、どこから子ども達に任せるか、学年によって考える必要があります。ですが、どの学年であっても、すべて教師が決めて『ただやらせる』活動には絶対にしません。例えば、上の学年になれば、掃除当番は清掃場所が教室以外にも受け持つことでしょう。そのような場合、ある清掃場所に何人必要で、担当は誰で、何日で交代するかなどは、子ども達でも考えられます。なるべく子ども達に任せて決めさせることで、子ども達は自分事として掃除に参加することができます。

 係活動は、慣れていない子ども達からはあまりアイデアが出てきません。そんな時には、係活動が盛んな高学年の教室を子ども達に覗かせに行かせたり、私が過去に面白いと思った係を紹介したりします。例えば、『なんでもNO.1カンパニー』『本の紹介商会』『お笑い研究会』『難問出すもん』『〇年〇組のいいとこ発見新聞社』などです。詳細は長くなるので割愛しますが、係名からいくらか想像できるかと思います。

 私が大切にしているのは、まずは子ども達が本気でやってみたいと思える活動であること。これは大前提です。それ以外で言えば、係活動を行う期間と振り返りです。学期ごとで係を変えるのが一般的かと思いますが、私は約1か月ごとに変えても良い機会を与えています。というのは、学期で係を続けて最後まで情熱をもって充実してできた経験がないからです。だいたい最初は頑張って取り組みますが、徐々にだれてきます。学期の終わりには、全く機能しなくなった係をたくさん見てきました。ですから大体1か月ごとに係活動について話し合う機会を設け、うまく機能しなくなった係については解散させることもあります。また振り返りはもっと頻繁に行います。そうして、たくさん話し合う機会を設け、少しずつ修正させながら係活動を充実させていきます。

 教室環境でも述べましたが、係活動用の掲示板スペースも確保します。そうすることで、係から宣伝したり協力を求めたりして友達に積極的に呼びかけ、係活動が活性化するようになります。私は、学校生活が『自分事』であるための大きな要素を、この係活動は相当に担っていると考えています。

最後に一言

 今回は、子ども達が自分事として学校生活を送るための、教師の手立て・工夫を大きく3つ紹介しました。参考になることがあったら、ぜひご自身の学級経営に取り入れてみてください。私自身も、毎年何か新たなチャレンジを一つは教室内で行うようにしています。皆さんの教室でも、子ども達の表情が生き生きとして、一人一人が自分事として学校生活を過ごせることを祈っています。

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